大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(ネ)2060号 判決

もつとも成立に争のない甲第九号証によれば、右建物につき被控訴人小島正辰のための所有権取得登記の経由された昭和二十七年十一月四日に先だち、同年十月三十日東京地方裁判所において控訴人牛込力三郎のため被控訴人片祐一に対し右建物の処分等を禁止する旨の仮処分決定があり、同裁判所の嘱託に基いて同年十一月一日その登記がなされたことを認めることができるけれども、本訴建物につき控訴人牛込力三郎が実体上の権利を有せず、被控訴人片祐一による右建物の処分を妨げるべき法律上の地位を有しなかつたことは既に説示したところにより明らかであり、このように処分禁止の仮処分後に仮処分債権者と同債務者との間の本案訴訟において、審理の結果仮処分債権者の被保全権利の存在が否定されることとなつた以上、たとえさきの仮処分決定が取消されないで形式上なお存続している間であつても、仮処分債権者は仮処分債務者又はその承継人に対して仮処分による処分禁止の効力を主張することはできない。けだし仮処分においては仮処分債権者の被保全権利の存在が疏明されたとき又はその疏明がなくとも裁判所の定める保証を立てたときはそれだけで仮処分が命ぜられるものであり、被保全権利の存在はいまだ証明されていないのであつて、それは本案訴訟において仮処分債権者の請求権の存在が是認されるまでの暫定的仮定的の処分に過ぎず、同一当事者間の本案訴訟において審理の結果仮処分債権者の被保全権利の存在が是認されない結果、その理由を以て仮処分債権者の本案の請求を棄却する旨の終局判決をなすべきような場合は、その同一当事者間において仮処分による処分禁止の効力をなお肯定するようなことは単に無意味であるばかりでなく、かえつて法律関係を混乱に陥らせるだけだからである。本件においては控訴人牛込力三郎の被控訴人片祐一に対する右仮処分の本案訴訟と被控訴人小島正辰より控訴人牛込代吉に対する建物明渡請求訴訟とが併合して審理せられ、控訴人牛込力三郎の被控訴人片祐一に対する本案の請求は、請求権の存在が認められないため理由がないものと判断すべきこと前示のとおりであるから、右処分禁止の仮処分の登記の日以後に請求の目的物を承継した被控訴人小島正辰から右仮処分債権者である控訴人牛込力三郎のために請求の目的物を所持することを主張する控訴人牛込代吉に対し本訴建物の明渡を求めることは、右仮処分の登記があることによつてはなんら妨げられることがないものというべきである。

(川喜多 小沢 位野木)

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